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Spine Dynamics 学術シンポジウム 2016Spine Dynamics Therapy Symposium 2016

Spine Dynamics学術シンポジウム2016 ルポ


       集まれ全国のセラピストの仲間たち
            新しい治療概念でパラダイムシフトを
                  相互啓発でさらに理解を深めよう

 慢性疼痛疾患を身体機能的側面から捉え直し、その共通した問題点に対して、同志が自ら開発・施行している運動力学に従った評価と治療法の高い妥当性と信頼性を確認し、国内のみならず世界にその効果を情報発信してくことをコンセプトに、東は北海道、西は鹿児島から、145名のセラピストが福岡に集いました。
 【評価法、基礎研究、運動療法治療効果】【WBI】【難病、整形、治療、内科】【全身体力、治療、柔性】4つのテーマで、34演題の発表が行われましたので、興味深い内容をいくつかご紹介します。

【評価法、基礎研究、運動療法治療効果】 6題
「食事をすると筋力はどうなるのか?」
 非常に面白いコンセプトの研究でした。結果は、食事をすると筋力は低下する(WBIが低下する)。アスリートへの食事指導はもちろん、人にとって食事は生きるための行動ですが、それがまた体に影響を及ぼす。食事の質、タイミング、非常に考えさせられました。
 また、今回の食事をすることで筋力が低下した理由に下位胸椎の内臓体性反射の影響を考察されていましたが、その他の発表でも下位胸椎に着目した発表がいくつかあり、座長からなぜ下位胸椎はこれほど重要だと思いますか?という質問に対し、発表者は「腰椎機能の代償」「広背筋の影響」「身体質量中心が下位胸椎に存在するため」など様々な考えがディスカッションされていました。

【WBI】 12題
「学力とWBIは相関するのか?」
 学校の先生ならではの着眼点だと思います。結果は相関しない結果でしたが、個人的には相関して欲しかったです(笑)。また、WBI評価には高価な機器が必要となりますが、より安価で正確に評価できる代替案に関する検討が多くなされていました。
 WBI評価の創案者である黄川昭雄先生は『筋肉とは宇宙である』とおっしゃっています。それほど筋肉とは神秘的だということです。Spine Dynamics療法に関わる先生方は、筋肉が神秘的だと感じているからこそいろんな着眼点を持ち、WBI評価の必要性を理解しているからこそ発展を感じさせる内容が多いのだと思いました。質問にあがった徒手筋力計を用いた評価方法のルーチンが今後確立されていくのではないでしょうか。

【難病、整形、治療、内科】 8題
 経験発表(症例発表)を中心に行われました。
 一般的な研究による手法では、これが良い悪い・これに関係があるなどとして結果報告されますが、臨床では教科書通りにならないことがあります。いや、むしろ教科書通りになることがほとんど無いといっても過言ではありません。統計学的な方法も大切ですが、成功体験・失敗体験による経験発表は説得力があり、臨床で悩んだときの手助けになる内容が発表されました。心理的要因・ストレス要因への対処法に関する質問が多く、その対処法には「声かけ」「見える化」「即時的・一時的成功体験の体感」などがあげられました。
 そんなこと?と思われる方もいるかもしれませんが、そんなこと?すらできないセラピストが多いのも現状かと思います。また、慢性疼痛症例や難治性症例は心理的要因の影響が大きいことを改めて実感させられました。

【全身体力、治療、柔性】 8題
「ウォーキングで体力は向上するのか?」
 ウォーキングは誰もができる簡単な運動ですが、歩くだけでは体力は向上しないという結果でした。質問も「極度に体力の低い人にも適応か」「ノルディックウォーキングの場合は」「早朝でのウォーキングも問題ないか」など、行いやすい、行わせやすい運動であることから積極的な質問が行われていました。WBIの特性を理解して行うこと、ウォーキングが重要ではなく、行動変容へどのようにつなげるかが慢性疼痛では重要であるなど、より実践的なディスカッションが行われました。
 歩けば歩くほど体力は低下するという結果は、既存の概念とは180度異なる結果であり、これがSpine Dynamics療法のコンセプトであるパラダイムシフトではないでしょうか。

〜多くの臨床家が結果に苦渋しており、結果を求めている〜
 あるテレビのCMで用いられている言葉ですが、「結果にコミットする」。結果は、机上の理論だけでどうにかなるものではありません。今回は、Spine Dynamics療法を実践するセラピストの「患者様のために」「セラピストのために」「自分のために」などといった想いを強く感じることができたシンポジウムだったと思います。
 そして、Spine Dynamics療法は完成した理論ではなく、これから自分たちで構築すべきであり、その情報発信を担っているのも自分たちであるということを改めて感じた一日となりました。
 来年は、第3回を東京で開催します。「研究発表」を活用し、臨床現場での成功・失敗体験、難治への適用など、「経験発表」は「セラピストのために」となります。多くのみなさんからの発表を期待します。

 来年、みなさんにお会いできるのを楽しみしています。

                                嵩下 敏文(医療法人社団 SEISEN)


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