◆◇━━━━━◇◆ 心と体のリハビリテーション研究会 ◆◇━━━━━◇◆        〜*−*〜 KOKO-KARA Information 〜*−*〜              第14号:2011.1.9            〜 免疫力を高める運動とは 〜            http://www.koko-kara.info/ ◇◆◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇◆◇        ■ 新年あけましておめでとうございます ■   本年も心と体のリハビリテーション研究会をご愛顧くださいますようお願  い申し上げますとともに、みなさまにとって幸多き年になりますことを心よ  りお祈り申し上げます。   「KOKO-KARA Information」は、心と体のリハビリテーション研究会が主催  した研修会・講演会等に参加された方、ホームページからメルマガの配信を  希望された方に月1〜2回、無料で情報を配信するものです。 CONTENTS〈目次〉───────────────────────────  ■ 免疫力を高める運動とは  ■ 姿勢制御アプローチ 沖縄特別講演会 参加者募集中!  ■ Spine Dynamics 療法特別研修会 参加者募集中!  ■ 編集担当者からの一言 ───────────────────────────────────           ■ 免疫力を高める運動とは ■ ───────────────────────────────────  【はじめに】   いよいよ本格的な冬の寒さを感じる今日この頃、テレビではインフルエン  ザの集団感染や学級閉鎖等のニュースが飛び込んできています。   風邪にかかるということは、免疫機能の低下により外部からの病原菌を退  治できず、体内(上気道)で炎症反応を引き起こしている状態にあります。  また、高齢者や小児など抵抗力が低い状態にある方は、風邪症状から重篤化  し肺炎などに至るケースも多々見られます。   このような症状にならないためにも免疫力を高めておくことが必要になり  ます。「免疫力を高める」ためには運動が効果的ということはご存じだと思  いますが、過度な運動により免疫力が低下することもあります。   そこで今回は「免疫細胞の種類と役割」を解説し、運動によって免疫細胞  がどのように変化しているかについて触れていきたいと思います。  【免疫のシステム】   免疫システムとは、免疫学的に言うと「自己と非自己を区別して、自己以  外のものを異物(抗原)として認識して排除する仕組み」です。言い換えれ  ば「体内に入った細菌やウイルスなどの外敵(非自己)から身を守る生体防  衛機能」のことです。つまり免疫システムによって私たちの体は健康に保た  れているのです。  【免疫細胞の種類と役割と運動による変化】   免疫細胞には役割分担があり、互いに連絡を取り合って動いています。    ●免疫細胞●   免疫細胞は造血幹細胞から分化して生まれ、分裂した細胞はリンパ系幹細  胞とマルチ系幹細胞になります。最終的に生まれる細胞はリンパ系幹細胞が  T細胞、B細胞、NK細胞。マルチ系幹細胞がマクロファージ、顆粒球(好中  球、好酸球、好塩基球)、赤血球、血小板です。赤血球、血小板、以外は白  血球です。   ○マクロファージ    ウイルスの死骸や殺傷している感染細胞やガン細胞を掃除します。また、    寿命がきた赤血球や白血球なども片づけます。中等度の負荷運動により、    マクロファージの抗ウイルス抵抗性、走行性、付着能、貪食能、サイト    カイン産生能などが高まります。逆に、マラソンなど激しい運動後には    それらの機能が低下し、上気道感染症のリスクが100〜500倍に上昇した    との報告もあります。   ○好中球    主に細菌やカビを貪食します。炎症を起こし、その結果、傷口から膿が    出てきますが、これは好中球と細菌の死骸です。好中球は、活性酸素を    生成し細菌を攻撃しますが、正常な細胞まで攻撃してしまいます。激し    い運動により活性酸素が筋損傷と筋痛を招く原因にもなります。   ○T−細胞    主に感染した細胞を見つけて排除します。T細胞は3種類あり、それぞ    れ司令塔、殺し屋、ストッパーの役目をしています。定期的な運動によ    りT細胞は増加し、下記の働きを強めます。    ★ヘルパーT細胞:司令塔     マクロファージから病原菌(抗原)の情報を受け取り、B細胞に抗体     を作るよう指令を出し、抗体を作るのを助けます。また、インターロ     イキンというサイトカインを分泌し、キラーT細胞を活性化させます。     高強度の運動によって50%増加し、その後、2時間で30%低下します。    ★キラーT細胞:殺し屋     普段は静かにしていますが、ヘルパーT細胞から指令があると、感染     した細胞にとりついて、その細胞を殺してしまいます。高強度の運動     で200%増加し、2時間後には50%低下します。    ★サプレッサーT細胞:ストッパー     過剰に攻撃したり、武器を作ったりしないように抑制したり、免疫反     応を終了に導きます。近年、レギュレトリーT細胞(調節性T細胞)     という抑制性の細胞が注目されています。運動に関しては未だに不明     確であり、今後の研究報告が期待されています。   ○B細胞    T細胞の指令により、病原体(抗原)に応じた抗体を産生し、病原体に    向かって攻撃します。B細胞は免疫グロブリンに分化し、上気道感染症    の初期防衛に重要な役割を担っています。また、長時間の過度な運動に    より機能が一過性に低下し、感染症のリスクを高めます。   ○ナチュラルキラー(NK)細胞    殺傷力が高く、常に体内をパトロールし、ガン細胞やウイルス感染細胞    を見つけると、直接殺します。このNK細胞は中等度の運動により細胞数、    活性を高めます。これはアドレナリン受容体を有し、深く運動と結びつ    いていることを示唆しています。また激運動によりNK活性は低下し、マ    ラソン後のNK細胞数は 30%も低下するとの報告もあります。  【免疫物質】   免疫細胞以外にも免疫システムに関わっている物質があります。   ○サイトカイン    サイトカインは免疫系が正常に働くように、細胞間の情報の交換・伝達、    細胞の分化、増殖、抑制などに関わり、生体の恒常性維持に重要な役割    を果たす物質です。サイトカインは神経系、内分泌系とも深く関わって    いて、生活活性作用とも言われています。   ○補体    補体はタンパク質分子で、細菌などの異物が侵入してくると、マクロフ    ァージなどから産生され、貪食細胞を呼び寄せ、細菌を破壊する働きを    します。運動による補体の変化は未だに不明確なことが多く、今後の研    究報告が期待されています。   ○抗体    体内に侵入した異物を抗原として認識すると、その抗原を撃退するため    に抗体をつくります。これを抗原抗体反応と言います。抗体は抗原を分    解することができませんが、抗原と結合して除去したり無害化します。    主にB細胞から産生される免疫グロブリンのことを言います。   以上のように、運動が「免疫力を高める」方法の一つではありますが、運  動内容や強度を間違えると逆に免疫力を低下させることにもつながります。  免疫という身体防衛機能は適度な運動により瞬時に変化し、その生体反応を  上手にコントロールすることが、免疫力を高めることにつながると思います。   次回は、実際の免疫作用を確認し、運動が免疫力を高めるからくりをお伝  えします。  【参考・引用文献】   「からだと免疫のしくみ」上野川修一著日本実業出版社   「免疫のしくみ」安部良監修PHP研究所   「免疫の意味論」多田富雄著青土社   「免疫の基礎」小山次郎他著東京化学同人   「免疫学の入門」今西二郎著金芳堂   「3日でわかる免疫」奥村康監修ダイヤモンド社   「運動と免疫」大野秀樹・木崎節子NAP limited ───────────────────────────────────     ■ 姿勢制御アプローチ 沖縄特別講演会 参加者募集中! ■ ───────────────────────────────────   沖縄特別講演会では「速効性のある機能改善手技」に焦点を絞り、Part1  の講師陣によるさらにパワーアップしたデモンストレーション検証実技をふ  んだんに踏まえ、これまでの常識を打ち破り、明確な効果を得られる治療手  法をご紹介いただきます。    参加した方々が検証実技からその理論を理解され、日々の臨床に生かせる  理論習得と意識の向上を目的としています。   この機会にぜひご参加ください。  ◇ 開催期日    2011年 2月20日(日) 沖縄コンベンションセンター  ◇ 内容の詳細・お申し込みはホームページで!    http://www.koko-kara.info/kensyukai/okinawa/index.html    ☆ お申し込みは携帯電話からも可能です。     http://www.koko-kara.info/i ───────────────────────────────────       ■ Spine Dynamics 療法特別研修会 参加募集中!■ ───────────────────────────────────   慢性疼痛疾患に対し、多くのセラピスト達が「患部のみの治療では完治し  ない」と感じているのではないでしょうか。世界的にも、慢性疼痛に対する  客観的評価法及び保存治療法はいまだ確立されておらず、現場では対症療法  が中心にならざるを得ません。   そこで我々は、患部を何らかの機序で発生した『結果』と捉えることで、  真の慢性疼痛疾患治療が実践できることを提唱します。慢性疼痛疾患の治療  では、身体のメカニカル及び反射的な両要素の因果関係を解き、根因となる  問題点を改善する必要があります。   本講演では、筋出力(作用力)と反作用力を緩衝する脊柱弯曲機能の関係  を、実技デモや多くの動画を用いて、分かりやすく説明します。  ◇ 開催期日    2011年3月13日(日) 日本青年館(東京:神宮外苑・国立競技場横)  ◇ 内容の詳細・お申し込みはホームページで!    [トップページ]→[KOKO-KARA研究会主催の研修会]     http://www.koko-kara.info/kensyukai/20110313/index.html    ☆ お申し込みは携帯電話からも可能です。     http://www.koko-kara.info/i ───────────────────────────────────            ■ 編集担当者からの一言 ■ ───────────────────────────────────   今回は免疫細胞の種類と役割について紹介しました。   私たち理学療法士・作業療法士は kinematics については得意としますが、  これら細胞レベルの話になると私自身も知識不足を感じます。患者様の状態  を把握し、より運動療法の効果を得るためには良い身体環境を維持するため  の免疫力向上が必然だと考えます。   次回も免疫についての話をわかりやすくご説明したいと思います。   ご期待ください。 **********************************************************************      − 最後までお読みいただきありがとうございました − 「KOKO-KARA Information」は、心と体のリハビリテーション研究会が主催  した研修会・講演会等に参加された方、ホームページからメルマガの配信  を希望された方に月1〜2回、無料で情報を配信するものです。   ※バックナンバーはホームページに掲載しています。    今後,このようなメールの配信が不要な方は、お手数をおかけしますが、  タイトル欄に「配信不要」とご記入の上、返信してください。  また、アドレスの変更等がございましたら、その旨ご連絡ください。       発 行 : 心と体のリハビリテーション研究会       e-mail : info@koko-kara.info       URL : http://www.koko-kara.info/ *********************************************************************